春分とは—昼と夜が等しくなる特別な日

春分の日は、太陽が真東から昇り真西に沈む日で、昼と夜の長さがほぼ等しくなります。古代の人々にとって、この現象は自然界の調和と再生を象徴する神秘的な出来事でした。春分を境に昼が次第に長くなり、日差しが暖かさを増していくため、まさに「春の本格的な到来」を告げる日でもあります。現代では「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」として国民の祝日に定められ、自然とともに生きる心を思い起こす機会となっています。

春分とお彼岸—ご先祖様に感謝を捧げる日

春分の日を中心にした前後7日間は「春のお彼岸」と呼ばれます。「彼岸」とは仏教で悟りの世界を意味し、太陽が真西に沈む春分の日は、あの世とこの世が最も近づく日と考えられてきました。そのため、この時期にはお墓参りをしてご先祖様に感謝を伝える風習が根づきました。お供え物には「ぼたもち」が定番。赤い小豆には邪気を払う力があるとされ、春の訪れとともに、家族の健康と幸福を祈る意味が込められています。

春の食卓を彩る旬の味覚

春分の頃は、自然の恵みが再び活気づく時期。春野菜では菜の花やたけのこ、山菜が旬を迎えます。また、春の魚といえば「桜鯛」。産卵を控えた真鯛が美しい桜色に染まり、味も脂ものって最も美味しい季節です。桜の花が咲く時期と重なることから「桜鯛」と呼ばれるようになったともいわれます。見た目にも華やかで、祝いの席や季節の膳にぴったりの春の味覚です。

春分の自然—光と生命が交わる風景

春分の頃になると、冷たい空気の中にもやわらかな陽射しが差し込み、日ごとに春の色が濃くなっていきます。梅や桜、レンギョウ、モクレンなどが次々に花を咲かせ、野に目をやれば、つくしやヨモギが顔を出します。鳥たちも巣づくりを始め、虫たちは活動を再開。まさに自然全体が息づき、生命のリズムが満ちていく季節です。私たちもまた、冬の間に溜めていたエネルギーを外へと向ける時期なのかもしれません。

春分の日に寄せて—自然とともに生きる心

春分は、一年の中でも「陰」と「陽」が調和する特別な節目です。昼と夜の長さが等しいこの日は、心身のバランスを整えるにも良い時期とされています。静かな時間を持ち、自分の内と向き合いながら、新しい季節の目標を立ててみるのもおすすめです。春分の光が差し込むように、私たちの心にも新しいエネルギーが芽吹くことでしょう。